企業理念や行動指針を定めていても、「社員に内容が伝わっていない」「日々の仕事で意識されていない」と悩む企業は少なくありません。そこで活用されているのが、企業の価値観や行動指針をコンパクトにまとめたクレドカードです。
クレドカードは、単に理念を書いたカードを社員へ配布するものではありません。社員が日常的に企業の考え方を確認し、自分の行動や判断につなげるためのツールとして活用できます。一方で、カードを作って配布するだけでは、十分な効果を得られない可能性もあります。
本記事では、クレドカードとは何かという基本から、導入する目的や期待できる効果、掲載する内容、作り方までわかりやすく解説します。さらに、朝礼や研修などを通じて、クレドを形骸化させず社員の日々の行動へ浸透させる方法も紹介します。
クレドカード自体なに?
クレドカードについて理解するには、まずクレドそのものの意味を知ることが大切です。クレドは企業理念と似ていますが、社員が日々の仕事で判断・行動するときの基準として、より具体的に示されることが特徴です。クレドカードは、その考え方を社員がいつでも確認できる形にしたツールです。ここでは、クレドの意味とクレドカードの基本的な役割を解説します。
クレドの意味とは
クレドとは、企業が大切にしている信条や価値観を、社員の行動につなげるために示した考え方です。例えば、顧客対応で判断に迷ったときに、何を優先すべきかを考える基準として活用できます。
企業理念が会社として大切にする考え方や存在意義を示すのに対し、クレドは「社員が日々どのように考え、行動するか」まで具体化する役割を持ちます。また、MVVはMission・Vision・Valuesの略で、企業の使命、目指す未来、大切にする価値観を整理したものです。
クレドは、こうした理念やMVVを現場で実践するための行動基準として設定できます。会社が大切にする価値観を、社員一人ひとりの具体的な行動へつなげることがクレドの重要な役割です。
クレドカードとは
クレドカードとは、企業が定めたクレドや行動指針を、社員が持ち歩けるカードにまとめたものです。理念を社内に掲示するだけでは、日々の業務の中で確認する機会が少なくなり、次第に意識されなくなることがあります。
そこで、名刺程度の大きさや折りたたみ式のカードとして携帯できるようにすれば、朝礼や研修、仕事で判断に迷った場面などで手軽に確認できます。紙製だけでなく、長期間の使用を想定して耐久性のあるプラスチック素材で制作する方法もあります。
大切なのは、単にクレドを小さなカードへ印刷することではありません。社員が必要なときに確認し、企業の価値観を日々の仕事で実践するための身近なツールとして設計することが重要です。
クレドカードを導入する目的
クレドカードを導入する目的は、企業理念や行動指針を社員に覚えてもらうことだけではありません。大切なのは、会社が重視する価値観を社員が理解し、日々の仕事の中で実践できる状態をつくることです。クレドカードを継続的に活用することで、理念の浸透から判断基準の共有、人材育成まで幅広く役立てられます。ここでは、代表的な3つの目的を解説します。
企業理念や価値観を浸透させる
クレドカードを導入する大きな目的は、企業理念や価値観を社員が日常的に意識できる状態をつくることです。企業理念を策定しても、Webサイトや社内資料に掲載しているだけでは、社員が繰り返し確認する機会は限られます。
クレドカードとして携帯できるようにすれば、朝礼やミーティング、研修などで定期的に内容を確認できます。例えば、毎週一つの行動指針を取り上げ、実際の仕事と結びつけて考えるといった活用も可能です。
重要なのは、配布して終わりにしないことです。社員がクレドに触れる機会を継続的につくることで、理念が掲げられているだけの言葉になることを防ぎ、日々の行動へ浸透させやすくなります。
社員の判断基準を統一する
クレドカードは、社員が仕事で迷ったときに立ち返れる共通の判断基準をつくるためにも役立ちます。企業では同じ出来事でも、担当者や部署によって判断が異なることがあるためです。
例えば、接客でお客様から想定外の要望を受けた場合や、営業で売上と顧客満足のどちらを優先するか迷った場合などが挙げられます。そこで「顧客に誠実である」「短期的な利益より信頼を大切にする」といった行動指針が共有されていれば、会社の価値観に沿った判断をしやすくなります。
これは顧客対応だけでなく、コンプライアンスを意識した行動にもつながります。細かなルールだけでは対応できない場面でも、クレドが共通の判断軸となることで、組織として一貫した行動を目指せます。
人材育成・エンゲージメントにつなげる
クレドカードは、理念を伝えるだけでなく、会社が求める人材像を共有し、社員の成長を支える人材育成ツールとしても活用できます。特に新入社員は、業務内容だけでなく「この会社では何を大切にして働くのか」を理解する必要があります。
例えば、新入社員研修でクレドの各項目を説明したり、1on1で行動指針をもとに仕事を振り返ったりする方法があります。具体的な行動とクレドを結びつけることで、社員自身も求められている考え方を理解しやすくなります。
また、企業の価値観に共感し、自分の仕事とのつながりを感じられる環境づくりは、組織への関わりを深めるきっかけになります。クレドを教育や対話に取り入れ、社員が納得して実践できる仕組みをつくることが重要です。
クレドカードに掲載する内容
クレドカードは携帯しやすいサイズで作ることが多いため、会社の理念や価値観をすべて詰め込めばよいわけではありません。大切なのは、社員が必要なときに読み返し、実際の行動につなげられる内容にすることです。ミッションやビジョンなど会社の目指す方向と、社員が実践する行動指針をわかりやすく整理することがポイントです。ここでは、掲載する基本項目と文章作成の考え方を解説します。
基本的な掲載項目
クレドカードには、会社が目指す方向と社員に求める行動が一目で理解できる情報を掲載することが重要です。代表的な項目として、ミッション・ビジョン・バリュー・行動指針・大切にしてほしい価値観などがあります。
ミッションは会社が果たす使命、ビジョンは将来的に実現したい姿、バリューは仕事をするうえで大切にする価値観を意味します。さらに「お客様の期待を一歩超える」「迷ったら誠実な選択をする」など、具体的な行動指針を加えることで、日々の仕事と結びつけやすくなります。
すべてを掲載する必要はありません。社員に何を理解し、どのように行動してほしいのかを基準に、掲載する情報を絞り込むことが読み返されるクレドカードにつながります。
読まれる文章にするポイント
クレドカードの文章は、格好よく見せることよりも、社員が読んだ瞬間に意味を理解でき、具体的な行動をイメージできることが重要です。抽象的な表現ばかりでは、社員によって受け取り方が変わり、実際の仕事につながりにくくなるためです。
例えば「誠実である」という言葉だけで終わらせず、「できないことを曖昧にせず、お客様へ正直に伝える」のように表現すると、取るべき行動がイメージしやすくなります。また、一つの項目に長い説明を詰め込まず、短い見出しと簡潔な説明に分ける方法も効果的です。
誰にでも理解できる言葉で短くまとめ、抽象的な価値観を具体的な行動へ落とし込むことが、日常的に活用されるクレドカードを作るポイントです。
クレドカードの作り方
クレドカードを作るときは、いきなりデザインや印刷から始めるのではなく、まず会社として大切にしたい価値観を整理することが重要です。そのうえで、社員が日常的に確認できるように情報を絞り込み、カードとして形にしていきます。クレドの作成、掲載内容の整理、デザイン・印刷という順番で進めることで、見た目だけではなく、実際に活用されるクレドカードを目指せます。
クレドを作成する
クレドカードを作る最初のステップは、会社が大切にする価値観を、社員が実践できる行動指針として言語化することです。経営層だけで決めるのではなく、実際に働く社員の意見も取り入れることで、現場で活用しやすい内容になります。
まず経営層へヒアリングし、創業時から大切にしている考え方や目指す組織像、顧客に提供したい価値などを整理します。さらに社員にも、仕事で大切にしていることや自社らしい行動について聞くと、現場の視点を反映できます。
集めた意見から共通する価値観を抽出し、具体的な行動へ落とし込みます。経営側の想いと現場の実態を結びつけることが、社員に受け入れられるクレドを作るポイントです。
掲載内容を整理する
クレドが完成したら、次に行うのがカードに掲載する情報の優先順位を決めることです。クレドカードは社員が持ち歩き、必要なときにすぐ確認するためのツールなので、すべての情報を詰め込む必要はありません。
例えば、ミッションやビジョン、特に重要な行動指針はカードへ掲載し、それぞれの詳しい説明や具体例は社内資料、研修資料、社内ポータルなどに分ける方法があります。項目が多い場合は、二つ折りや蛇腹折りなど、掲載量に合わせた形状を検討することもできます。
カードだけで完結させようとせず、日常的に確認してほしい情報を優先することが大切です。情報を整理することで、社員が読み返しやすいクレドカードになります。
デザイン・印刷する
掲載内容が決まったら、最後にデザインと印刷の仕様を検討します。ここで重要なのは、クレドカードを配布物ではなく、社員が継続的に使うツールとして考えることです。文字の読みやすさはもちろん、携帯しやすさや耐久性なども考える必要があります。
例えば、財布や社員証ケースに入れるなら名刺・カード程度のサイズが扱いやすく、掲載内容が多ければ二つ折りや蛇腹折りなども選択肢になります。また、使用期間や利用環境によって、用紙の厚さや表面加工など適した仕様も変わります。
サイズ・用紙・印刷方法によって使いやすさや仕上がりは大きく変わるため、目的に合わせた仕様選びが重要です。
サイズ・用紙・印刷方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
→ クレドカードを印刷会社に依頼する前に知りたいサイズ・用紙・加工の選び方を解説
クレドカードを社内へ浸透させる方法
クレドカードは、社員へ配布しただけでは十分な効果を発揮しません。重要なのは、社員がクレドを目にする機会を増やし、日々の仕事や判断と結びつけることです。朝礼や研修、1on1、評価制度など既存の社内活動にクレドを組み込むことで、特別な取り組みにせず継続できます。ここでは、クレドカードを形骸化させず、実際の行動へつなげる方法を紹介します。
朝礼・ミーティングで活用する
クレドを浸透させるには、朝礼やミーティングなど、社員が日常的に参加する場で繰り返し触れることが重要です。一度説明を受けただけでは、クレドの内容を理解できても、日々の行動にまで落とし込むことは簡単ではありません。
例えば、朝礼でクレドカードから一つの行動指針を取り上げ、実際の仕事でどのように実践できるかを共有します。営業なら顧客への提案、接客ならお客様への対応など、具体的な業務と結びつけると理解しやすくなります。
毎回長時間話し合う必要はありません。短時間でもクレドと実際の仕事を結びつける習慣をつくることが、理念を日常の行動へ定着させるポイントです。
研修・1on1で活用する
クレドカードは、社員教育や1on1にも活用できます。特に新入社員や中途社員に対しては、業務内容だけでなく、会社がどのような考え方を大切にしているのかを伝える教材として役立ちます。
例えば、新入社員研修でクレドの各項目について説明し、実際の業務ではどのような行動が求められるのかを具体例とともに共有します。1on1では、最近クレドを実践できた場面や、判断に迷った場面について上司と振り返る方法も効果的です。
単に内容を暗記してもらうのではなく、社員自身の経験とクレドを結びつけて考える機会をつくることで、会社の価値観を自分の行動基準として理解しやすくなります。
評価・表彰制度と組み合わせる
クレドを実際の行動につなげるには、評価や表彰制度と組み合わせ、会社が求める行動を具体的に示す方法も有効です。クレドを掲げていても、実際の評価基準と異なっていれば、社員にとって重要性を感じにくくなるためです。
例えば、売上や業務成果だけでなく、顧客への誠実な対応やチームへの貢献など、クレドに沿った行動を評価項目に加える方法があります。また、クレドを実践した社員を社内表彰し、具体的な行動事例を共有することも一つの方法です。
クレドに沿った行動が会社から認められる仕組みをつくることで、抽象的な言葉だったクレドが、社員にとって実践すべき行動として理解されやすくなります。
定期的に内容を見直す
クレドカードは一度制作したら終わりではなく、会社や組織の変化に合わせて定期的に内容を見直すことが大切です。事業内容や顧客、組織体制が変われば、社員に求められる行動も変化する可能性があります。
例えば、数年ごとに社員へのアンケートやヒアリングを行い、現在のクレドが実際の仕事に合っているか、理解しにくい表現がないかを確認します。ただし、頻繁に変更すると判断基準が定着しにくいため、企業として変わらず大切にする価値観と、見直すべき行動表現を分けて考えることも必要です。
定期的な振り返りと改善を行うことで、クレドカードの形骸化を防ぎ、現在の組織に合った行動指針として活用し続けられます。
クレドカード導入でよくある質問
配布するだけでも効果がありますか?
クレドカードは、社員へ配布するだけでは十分な効果を得にくいと考えられます。重要なのは、カードを持たせることではなく、クレドを日々の行動と結びつけることです。例えば、朝礼で一つの項目を取り上げたり、1on1で実践できた行動を振り返ったりすると、内容を意識する機会を増やせます。クレドカードは配布して終わるものではなく、理念や価値観を継続的に確認するためのツールとして活用しましょう。
クレドと企業理念は何が違いますか?
企業理念とクレドは似ていますが、役割には違いがあります。一般的に企業理念は、会社の存在意義や大切にしている基本的な考え方を示すものです。一方、クレドは、それらの考え方をもとに、社員が仕事をするときに大切にする価値観や判断基準を示します。企業理念が会社として目指す考え方なら、クレドは社員が日々の仕事で実践するための指針と考えると理解しやすいでしょう。両者を関連付けることで、理念を具体的な行動へつなげやすくなります。
どのような内容を掲載すればいいですか?
クレドカードには、ミッション・ビジョン・バリューや行動指針など、社員に日常的に確認してほしい内容を優先して掲載することが大切です。すべての理念や説明文を詰め込むと、文字量が増えて読まれにくくなります。例えば、カードには重要な行動指針を短い文章で掲載し、詳しい背景や具体例は研修資料や社内ポータルで説明する方法があります。社員が必要なときにすぐ確認できるよう、情報を絞り込み、わかりやすい言葉でまとめましょう。
社員へ浸透させるにはどうすればいいですか?
クレドを社員へ浸透させるには、仕事の中でクレドに触れる機会を継続的につくることが重要です。朝礼やミーティング、研修、1on1などでクレドを取り上げ、実際の仕事と結びつけて考えてもらいます。また、クレドに沿った行動を社内で共有したり、評価・表彰制度へ取り入れたりする方法もあります。大切なのは暗記させることではありません。社員がクレドを判断に迷ったときの基準として使える状態を目指し、日々の業務の中へ少しずつ定着させましょう。
まとめ|クレドカードは企業理念を日常の行動へつなげるツール
クレドカードは、企業理念や大切にする価値観を掲載するだけのカードではありません。会社の考え方を社員が日常的に確認し、実際の判断や行動へつなげるためのツールです。効果的に活用するには、経営層と社員の意見を踏まえてクレドを言語化し、わかりやすい内容に整理することが重要です。さらに、配布して終わるのではなく、朝礼や研修、1on1、評価・表彰などと組み合わせることで社内への浸透を促せます。社員が必要なときに自然と確認でき、行動のよりどころとして使えるクレドカードを目指すことが、企業理念を組織文化として根付かせる第一歩となります。
